帝王学-貞観政要の読み方 平安時代から愛読されたリーダー学

家康が愛読!北条政子が絶賛!日蓮が書写!
と書店の推薦ポップのような書き方をしてみたが、実際にそんな本が存在する。
貞観政要」。中国で最も長く続いた時代、唐の基礎を作ったと言われる【太宗】と、その有能な部下たちの政治討論を綴った書であり、リーダー学の教科書として日本でも1000年以上親しまれてきた。

帝王学 「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)

帝王学 「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)

実際の「貞観政要」は十巻からなる大作であるらしいが、山本七平さんが書いたこの本は200頁弱のサラリと読める本である。*1

私はただの一読者であり、一読者として興味を感じた部分、自戒の書として役立った部分、また、私が読んだように読めば、多くの人の役に立つであろうと思われる部分の抜粋に、自分の感想を付け加えたものにすぎない。(171p)

よって、書評の書評みたいになってしまうが、リーダーについての切り口が面白かったので取り上げてみたい。

「攻め」の時期、「守り」の時期

創業と、それによって出来上がったものを維持して行くのと、どちらがむずかしいのであろうか(1p)

よく言われる問いだが、この言葉も「貞観政要」由来らしい。
結論から言ってしまえば、どちらも難しく、またそれぞれに異なる資質が求められる。創業と維持は、言ってみれば組織の「攻め」の時期と「守り」の時期にあたるわけだが、「攻め」で成功した人材をそのまま「守り」に用いたため、成功後に先細りしていく話は良く聞く。
昨今のビジネス書は「攻め」の心について書かれた本が多いと思う。生き馬の目を抜く現代社会では仕方のないことかもしれないけれど、手に入れたものを「守る」心も必要であろう。
この本は「守る」ためにリーダーに必要な心構えを説いている。

「守る」リーダーに必要なもの

「守り」の時期は難しい。華々しい成果を出すことが目的ではないので、地味で評価され難い。また、守るものがあるということは、慢心を招く。慢心は怠惰を招く。「守る」=「動かない」ことだと思う。
如何に優れたリーダーであろうとも、慢心したりモチベーションが下がったりはしてしまう(太宗も度々慢心したりミスしたりしている)。しかし、優れたリーダーはそれを軌道修正することができる。何故か。


それは「耳に痛い直言をしてくれる部下」がいるからである。
「守り」の時期には、小さな事を荒立てないことが現状の維持につながる、そうしていれば食っていける、と感じるため、わざわざ危険を冒してまで上司に直言してくれる部下は中々いない。しかし、本当は「守り」の時期にこそ直言が必要なのである。
挑戦期である「攻め」の時期には、何か自分がミスをすれば直ぐに悪い結果が返ってくるため、自ら修正することができる。しかし「守り」の時期には、結果が中々帰ってこないため、悪い結果が分かったときにはもう手遅れということが起こりうる。


優れたリーダーには、直言を言ってくれる部下がいるのだ。そして、優れた部下は優れたリーダーだから居るのだろう。

自分を振り返って

実際、僕の属する社会でも中々直言をしてくれる後輩はいない。去年まで居た後輩は色々言ってくれていたので、現在の自分に非が無いからということではないだろう。
太宗は直言をされた時にカッとはなるが、その後思い直して褒美を与えるらしい。
僕も何か言ってくれる人がいたら、その時は気分を悪くするかもしれないけれど、気分が収まったら改めて厚くお礼をいうことにしよう。とても恥ずかしいけれど。

*1:読んだ本が写真と違うので頁数は異なるかもしれない