空気を作る意味

瀬戸内海にある無人島。そこには何故か小さな鳥居がいっぱい立っています。鳥居はどうも新しく、最近作られたもののようです。無人島なのになぜ鳥居が立っているのでしょう?
上記の問題は、めざましテレビで見た企画なんですけど、答えを知ってびっくりしました。
無人島なのに鳥居を立てる理由。それは、その無人島への違法廃棄を止めさせるためなんです。その無人島には本土で出された廃棄物が違法に捨てられていました。困った役場の人たちは島の各地に鳥居を建設したのです。その結果、鳥居の周りに捨てるのは忍びないと、違法廃棄件数が大幅に減ったそうです。そんな悪いことをする業者さん達でも、鳥居は利くんですね。
こういう雰囲気を使って人を動かすっていうのは有効だと思うんですよね。たとえば、ただ見ただけでは「うまいなー」くらいの絵が、豪奢な部屋で美しい額縁に飾られていただけで、多くの人を涙させたという話も聞きます。あと、自殺の名所といわれているところに幾ら「家族のことを思い出して」とか書いても意味なかったのに、「こんにゃくを凍らせるとどうなるんだろう?」と書いたらそこでの自殺がぴったり止んだ、という話も聞きます。
雰囲気というのは思っている以上に人の心を動かすのです。んで、これはなんでなんだろうなーと考えたんですが、たぶん雰囲気は人の意識の矛先を誘導するから人の心に強く影響を与えられるんじゃないですかね。鳥居は良心に、額縁は絵に意識を向けさせ、こんにゃくの無駄話は自殺への意識を拡散させます。人が一度に考えられる量など限られているので、意識の矛先さえ向けてやれば、結構意図した通りに人は考え、動いてくれると思うのです。
この、雰囲気による意識の矛先誘導というのは、ただ言葉で行っただけではあまり効果がありません。言葉というのは言った人と聞く人の人間関係が作用するものだからです。意図したことが通じるのか、そもそも聞く人が聞く気があるのか、ということに大きく左右されてしまうのです。それに対して、雰囲気を使って意識の矛先誘導を行う場合は、雰囲気の属する文化と作用される人の間の関係が重要になります。ですから、同じ文化で暮らしている人間には共通して影響を与えることが出来る分、とても強力なのです。

結語

ということで、雰囲気は何かに注意を向かせることで人の心を誘導できる強いツールである、という話でした。人の心を動かしたいときは、ストレートに言葉で伝えることよりも、舞台装置などの雰囲気作りというのが結構重要なのかもしれませんね。だからこそ、人は式典などを大事にするのかもしれません。


追記:トイレの便器に的を描くと外す人が減って掃除にかかる費用削減につながる、というのはとても良い例ですね。指摘してくれた方ありがとう。